僕と話をしよう。

のんびりきままにペルソナオリジナルストーリー更新していきます。たまにほかの記事も書くかも。

4月8日 午前中 学校

学校へ着くと、外側の入り口に大きく紙が張り出されていた。

近づいてよく見てみるとどうやらクラス表らしい。

自分が昨年の入学式で倒れてからまるまる一年間眠り続けていたこと、それから自分はまた1年に編入されることであろうと、医者が言っていたことを思い出す。

再び顔をクラス表に向け、自分の名前を探す。

特徴的だからかすぐに見つけることができた。

名前はDクラスの欄にあった。

1年のクラスは4階にあるため、階段を上らなくてはならない。

玄関の近くに階段があり、その階段の正面に保健室がある。

ここでなら授業をさぼることができそうだ。

階段を上り切り、4階を見渡すと階段の正面近くに自分の教室があった。

自分の教室に入り、黒板に視線を向けると紙が貼ってあるのが見える。

おそらく席順表だろう。

その紙を見るために黒板に近づくと、静かな教室内に誰かが階段を駆け上がる音が響いた。

そのバタバタとした足音はやがて大きくなり、自分がいる教室の前で止んだかと思うと、派手な音を立ててスライドドアが開いた。

「遅れてすいませんでした!!寝坊してしまって…。」

ドアが開いたとたん、綺麗に腰を45度に曲げている黒髪の青年が姿を現した。

その青年を眺めていると、返事や怒鳴り声がないことに不安を覚えたようで、ゆっくりと顔を上げる。

目線が合った。

きょとんとした彼は教室内を見回し、状況を理解していないようで、もう一度僕の顔を見て頭に?を3つほど浮かべていた。

そんな彼に状況を教えるために教室内の時計を指でさす。

時計は7時半を示している。

彼は時計を二、三度見てさらに自分の携帯で時間を見て、ようやく状況を理解したようだった。

真っ赤な顔がタコのようだ。

「ま、マジか…。初日から恥ずかしいところを見せちゃった…。」

そう言って目の前でうなだれた彼を横目に見つつ、再度黒板に貼ってある席順表に向き合う。

自分の席は窓側の一番後ろの席らしい。

迷うことなく一直線に席へ向かう。

カバンから勉強道具を取り出し、机の中へ乱雑に入れ込む。

時間があるのでそのまま机に腕を突っ伏して目を閉じる。

意識はすぐに深い眠りへと落ちて行った。

 

一番最初に主人公が保健室で眠っていた件について

続きを書きながらふと思ったのですが、

保健室に1年間眠り続けるってありえないですよね!!

おかしいですね!

普通保健室に一時的に置いといて、その後病院に搬送される、はず?です。

ちゃんと話を作りこんでいないからこうなるのでしょう。

なんてこった。

このあたりをつじつまが合うように変更する予定です。

今後もこういったケースが出ると思います。

暖かい目で話の結末まで見届けていただけるとありがたいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

4月8日 朝

突然、壮大なヴァイオリンの高音が軽やかにリズムを刻む音が耳に鳴り響き、驚いて飛び起きた。

なんでこの音楽をアラームにしたのか。

昨日の自分に恨み言を言いつつ、時計に目をやる。

短い針は6を、長い針は12を示している。

布団に戻ろうとする怠惰な意思を踏みつけ、ベッドから起き上がる。

窓からは朝日が覗き、無機質な部屋を照らす。

昨日となんら変わりはない。

ただ、違いを挙げるならばこの部屋の主が戻ってきただけだ。

適当に顔を洗い、パサついた口の中をどうにかしたくて口を漱ぐ。

眠気も吹き飛んだところで制服に着替える。

リュックに教科書など必要なものが入っていることを確認して背負う。

時間はまだあるが、何もすることがないので早めに家を出る。

あの時間に本など読むのもいいかもしれない。

そんなことを考えながら、スマホのマップを頼りに学校へ歩き出した。

 

 

 

 

4月7日 自室

結論を言うと何もなかった。

本当に何もなかった。

部屋の左側に小さめの木目柄のデスクがポツリと置いてあり、反対側におおきく幅をとるベッドの存在感をより一層大きくさせる。

その奥には白い本棚が所在なさげに佇んでいる。その中身は言うまでもなく空だ。

壁には絵画や、ポスターなどが貼ってあるはずもなく、画鋲1つすらない。

いや、刺した後すら見当たらない。

入り口側からは見えない位置にあるクローゼットの中は夏の制服と長袖の薄灰色のYシャツが一枚ハンガーに掛かっているだけで、私服なども見当たらない。

机の中には郵便局の通帳が1冊と暗証番号が書かれたメモがあるだけ。

メモはゴシック体で癖のない文字を映している。あきらかに手書きではなかった。

僕は手掛かりになるものがないという事実にひどくがっかりはしたが、同時に安心もしていた。

本当は怖かったのだ。

今の自分と過去の自分の差が。

今の自分を否定されるような事実などいらない。

そんなものはなくていい。そう思った。

ひとしきり部屋を物色した後、僕はベッドに倒れこむように体を預けた。

柔らかな布団の感触に包まれ、だんだんと意識が落ちていく。

眠い。

そうつぶやいた先は覚えていない。

 

 

 

 

初期ペルソナまだ決まっていないんだよなあ…

by ゔぁれっじ

 

4月7日 放課後3

かすかに声が聞こえる。

瞼をすり抜け、刺すような鋭い光が眼球を刺激し、意識を浮上させた。

 

「―――。ーーーーぃ。

おーい?寮についたよー。」

聞き覚えのある声にうやむやだった意識が一気に覚醒する。

目を開けると夕焼けの焼けるような赤と、保健室の先生の困ったような顔が視界に飛び込んできた。

まぶしさに思わず目を細める。

どうやら病院から寮に着くまで眠ったままだったようだ。

おそらく先生が車まで運んでくれたのだろう。

車から降りて、一応感謝の言葉を述べておく。

「あぁ、別に気にしなくてもいいのに。律儀にどうも。

 …それにしてもずいぶんと眠っていたね。

 まあ、慣れないところで1週間も過ごしたのだからそりゃ疲れるか。」

うんうん、と頷きながら先生は一人で納得をしている。

不意に首に痛みを感じ、身じろぐと体の節々に痛みが走った。

車内で寝ていたからか体がバキバキだ。

大きく伸びをして固くなった体をほぐす。

「疲れただろうし、寮に戻ったら今日はもうゆっくり休んで。

 君の部屋は1階の124号室だよ。自分で行けるかい?」

 保健室の先生の言葉にうなずく。

「そっか、じゃあこれ鍵ね。

 君の荷物は部屋にあるから安心して。

 体調が悪くなったときは寮の管理人さんに言ってね。

 あとは大丈夫かな、うん。」

それじゃ明日学校でね、と言って先生は車で去って行った。

特に意味はないが、なんとなく手を振って見送った。

今日は本当に疲れた。

早く自分の部屋にいって休みたい…。

それにしても夢で見たあの空間と変な老人…。確かイゴールといっただろうか。

将来困難が待ち受けているかもしれない、と言っていたが一体どういうことなのだろう。

漠然とした不安を抱えたまま自分の部屋にたどり着く。

先生からもらった鍵をドアノブにさす。

カチャリと耳に馴染んだ音を鳴らしてドアは開く。

この扉の先にもしかしたら自分の無くした記憶について分かるもの、アルバムなどがあるかもしれない。

そう思うと期待と僅かな恐怖心が芽生える。

思いを馳せ、僕は銀色に冷たく光るドアノブに手を掛けた。

 

自殺

僕は自分のやりたいこととは違う仕事をしている。

何のためか。

それは生活のためだ。

お金がなければ、人は生きていくことができないのだ。

だから僕はやりたくもない仕事につき、

やりたくもない

かけらも興味のない仕事に毎日自分の時間を費やす。

長時間拘束され、

眠くなるような単純作業ばかりの退屈な毎日を過ごし、

1か月頑張ってようやくもらえた給料は安価で。

それを仕方がないと苦笑し、自分を慰める。

それを何回も繰り返して

今僕はここにいるが

仕事をしているとふと思うのだ。

今の自分を説明するならば

自由になりたいと叫んで心臓から飛び出そうとする

自分の羽をつかんで

力いっぱい引っ張ってもぎ取り

逃げられないようにアキレス腱にナイフを突き立て

臓腑をぐちゃぐちゃにかき混ぜ

日々自分の手で自分を殺している。

つまりは自殺だ。

 

何を言ってるかわからないだろう。

僕自身も何を言っているのか分かってはいないが。

 

ひとつ言えることがあるとするのなら

僕は自由になりたい。

それだけだ。

 

4月7日 放課後2 ベルベットルーム

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

長い鼻の老人が歓迎する言葉を述べる。

老人の見た目こそ奇妙だが、声は割と優しげな声をしていてギャップを感じる。

僕を眺めると

「これはまた、数奇な運命をお持ちなようだ…フフ。」

意味ありげな言葉と共に笑った。

数奇な運命。簡単に言えば波乱万丈になるということ。

目の前の老人の目をじっと見続けていると、なんだかすべてを見透かされているような気分になり、体がむず痒くなる。

見ただけで運命なぞ分かるものかとも思ったが、この老人が言うのであれば、もしかするとこの先その意味通りの人生が待っているのかもしれないと、頭の隅で考えてしまう。

何よりもこの奇妙な空間がそうさせる。

「申し遅れましたな、私の名はイゴール。お初にお目にかかります。

ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所・・・。ベルベットルームの主を致しております。同じくここの住人で、右におりますのがロイエ。左におりますのがルグレでございます。」

「僕はロイエと申します。」

「私はルグレと申します。」

「「お客様の旅路のサポートをさせていただきます。

  以後お見知りおきを。」」

右側の男性がロイエ、左側の女性がルグレと名を名乗る。

 

どちらも銀髪ということ以外共通点がなく、見た目も雰囲気も全然違うにもかかわらず、そっくりだと思った僕は目が疲れているのかもしれない。

「さて、あなたの名前を伺っておくとしましょう。」

特に警戒するわけでもなく素直に自分の名前を話す。

「ふむ、なるほど。

 ここは何かの形で契約された方のみが訪れる部屋…。 

 今からあなたはこの”ベルベットルーム”のお客人だ。」

お客人という言葉に引っ掛かりを覚えながらも、相槌をうつ。

なんとなくだが、今は説明してくれないだろう雰囲気を感じ取ったからだ。 

向こうも僕が理解していないことをわかっていて、それでも話を進めているのだろう。

「あなたは力を磨くべき運命にあり、必ずや私どもの手助けが必要になるでしょう。」

だが…と老人は続ける。

「あなたはまだ力が覚醒していないご様子。

 時が来たらまたお会いしましょう…。」

力とは?どうやったらその力は磨けるのか?そもそも…

色々聞きたいことがあるのにだんだんと意識が遠くなっていく。

瞼が重力に逆らえず、視界は徐々に狭まる。

やがて完全に目を閉じきったが、あの鮮烈な青は瞼の裏に焼き付いていた。