4月1日 放課後 ※名前を更新
暖かな風が頬を撫ぜる。
たすけて--------
風に乗せられて誰かの声が聞こえた気がする。
その声の主を知りたくて僕は深い眠りから意識を浮上させた。
目を開けると視界に広がるのは白い天井だった。
微かに薬品の匂いが漂っている。
どうやら保健室にいるらしい。
白いシーツを避け、上体を起こすとベッドが軋む音がした。
その音で気がついたのか慌てて男性が近くに寄ってきた。
「目が覚めたんだね!体の方は大丈夫?!痛みとか頭痛とか何もない?!」
特に痛みは感じなかったので首を縦にふった。
「問題なさそうでよかった!入学式の途中で倒れてからずっと目を覚まさなかったからてっきりあの病気だと、、、。でも大丈夫そうだね!!」
入学式、、、?
自分にそんな記憶はなかった。
「え、記憶ない?何処から?全部?全部って、名前しか覚えてないの?えぇ、、、」
おそらく保険室の先生であろう人物は困った顔をしてぶつふつとつぶやき始めた。
「まあ、校長先生達に伝えて来るから取り敢えず保健室利用書に名前書いて置いて!」
そう言って僕に紙を乱暴に渡し、バタバタと落ち着きがない様子で保健室から出て行った。
取り敢えず名前を書こう。
------鼎 仁。
足音は廊下から聞こえない。
先生が戻って来るのは時間がかかりそうだ。
戻るまで保健室を見て回ろうか。
「いやー、ごめんごめん。色々あってね、、、。」
落ち着いた様子の先生が困った顔をして戻ってきた。
「取り敢えず今日から数日は病院で検査しよう。2年間ぐらい眠っていたからどこか不調とかあるかもしれないし。」
2年間という言葉に、自分はそんなに長い間眠っていたのかと思った。
「病院は学校側で手配したから安心して。病院までは僕が送って行こう。着替えとかも向こうで用意してもらってあるから大丈夫。」
どうやらしばらくは学校に戻れないようだ。
利用書を渡し、大人しく先生の車に乗り、病院へ向かった。